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サガン鳥栖関連

SPECIAL 再生へキックオフ・正念場のサガン鳥栖

サガン鳥栖に関する西日本新聞朝刊掲載の転載です。(無くなる前にぜひ記録しておきたい内容なので。)
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【特集】再生へキックオフ・正念場のサガン鳥栖 <上> 葛藤 市民球団の現実厳しく―連載


 ◆百年構想の手本
 「今のままでは、サガンは生き残れない」。七月、鳥栖市で開かれたJ2・サガン鳥栖の株主懇談会。古賀照子社長は厳しい表情を浮かべながら、株主たちに資金難の現実を突きつけた。
 一企業に経営を依存しすぎて解散した、前身の「鳥栖フューチャーズ」。この教訓を踏まえサガン鳥栖は、企業頼みから脱却し、地域がクラブを支える「市民球団」を目指してきた。フューチャーズ当時と比べると、資本金は約五億円減の一億二千三百万円。百六十九人の株主のうち、多くはサポーターたち個人株主で、大半が小口だ。サッカー教室などファンとの交流を重ね、支援を広げていく姿勢に、当初はJリーグも「地域密着を目指す百年構想の手本」と評価した。
 だが、大手スポンサーに頼らない運営方針は、クラブ発足時から経営基盤の弱さとなって表れた。年間予算は十二球団中、水戸と並び最低水準の約三億円。加えて、成績不振が続き、観客数もフューチャーズ当時の半分以下の三千百七十二人に減少。入場料や広告収入が落ち込み、経営を圧迫する悪循環に陥った。

 ◆減資主張に反発
 こうした状況を打開しようと、古賀社長は七月の株主懇談会で、個人株主を減らし、大手企業のスポンサーを募る「減資」を主張。しかし、サポーターや個人株主は「身売りではないか」と反発。五カ月に及ぶ経営混乱の発端となった。
 サポーターたちが市民球団にこだわるのは、フューチャーズ解散時に五万人分の署名を集め、クラブ設立へと導いた自負が大きい。このため、人件費削減など古賀社長が進めてきた経営を「強引で、地域を思っていない」と非難。両者は対立を深めてきた。
 経営改善のため、旧取締役を中心に設置したクラブの諮問機関「改革委員会」の席上、古賀社長は「体力的に限界」と辞意を表明。後継にはサガン鳥栖後援会長の元佐賀大学長、楠田久男氏(87)らサポーターの立場に近い七人が選任された。新取締役候補は減資を否定。市民球団の看板を守り通そうとしたが、資金集めもままならず、わずか一カ月半でさじを投げた。
 新取締役候補に引導を渡す形となったJリーグによる「退会勧告も辞さない」との最後通告は「クラブ経営がサポーターの感情に左右される現状は放置できない」というリーグ側の強い意思表示でもあった。

 ◆事態は振り出し
 「サガンがなくなると県民の夢が消える。どうかクラブを残してほしい」。同市内で十三日にあった意見交換会。次期社長のなり手がいない中、今まで古賀社長の退任を望んでいたサポーターたちが一転、続投を要請。両者の対立は「存続」という大きな目標の前に、ひとまず解消された。
 古賀社長の続投と、元J2・川崎監督の松本育夫氏の監督就任が決定。サガンはようやく、再生への一歩を踏み出したが、「根本的には何も決まらず、七月の株主懇談会当時に戻っただけ」(サポーターの一人)なのが現状でもある。減資を諮る株主総会をはじめ、行く手には多くの難問が控えるなか、何より求められるのはクラブとサポーターの一体感の維持だ。
 成績低迷に経営難、恒例のお家騒動の揚げ句、Jリーグから最後通告まで突きつけられた今季のサガン鳥栖。果たして再生は可能なのか。これまでの経緯を振り返り、今後の展望を探ってみた。
2003年12月28日 西日本新聞朝刊掲載
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【特集】再生へキックオフ・正念場のサガン鳥栖 <下> 光明 原点に返って反転攻勢を―連載

鳥栖市役所で市職員の歓迎を受ける
松本育夫新監督(写真中央)。
チーム再建への期待がかかる

 ◆V字回復の秘密
 成績はJ2最下位、入場客は一試合平均わずか千八百五十人。四億五千万円もの累積赤字にJリーグ諮問委から警告―サガン鳥栖の話ではない。経営危機の先輩格、ヴァンフォーレ甲府の、三年前の姿だ。お家騒動こそないが、決算内容はサガンよりさらに厳しい。
 その「どん底」のクラブが二〇〇三年度は一試合平均六千人近くを集め、年間予算は倍増、成績も五位という優良チームに変ぼうした。運営会社の広報担当、鷹野智裕さんは「V字回復の秘密」を語る。「入場者数は三千人以上、広告料収入は五千万円以上といった明確な目標を設定。達成できなければ解散するという約束をしたことで、サポーターや行政まで目の色が変わった」

 ◆ハードルの高さ
 翻ってサガンはどうか。「まるで学級委員会」。サガンの株主総会や懇談会の雰囲気を、関係者の一人はそう揶揄(やゆ)する。市民球団ゆえ、経営に対するサポーターや個人株主の影響力は小さくはない。よくいえば民主的、悪くいえば「言いたい放題」になりがちだ。
 続投が決まった古賀照子社長が減資に執心なのも、累積赤字を帳消しにできるのと同時に、株主の整理が経営安定化には不可欠と判断しているからだ。ただ、減資には個々の株主の了承が必要。「それがすんなりいくくらいなら、そもそも経営は混乱しない」(鳥栖市の担当職員)という、非常に高いハードルだ。
 スポンサー探しと、行政との協力関係の再構築も大きな課題。鳥栖市は今季、サガン救済のため、鳥栖スタジアムの使用料免除とユニホーム広告料計三千万円を計上したが、経営混乱のあおりで議会の反発を招き、修正を余儀なくされた。牟田秀敏市長は「積極的な支援を求める市民の盛り上がりもなかった。まずは応援しがいのあるチームづくりが先」と訴える。

 ◆「ピンチは好機」
 大口スポンサーについても、古賀社長は「減資がうまくゆけば、何とかする自信はある」と話すが、牟田市長は「ピッチの看板にしても、市が取引先に無理にお願いしたものばかり」と、見通しの厳しさを強調する。「大金をあてにするより、原点に返ってチケットを買ってもらう活動を強化すべきでは。市も周辺の市町村やお隣の久留米市に購入協力を働きかけたい」
 解散一歩手前までいった今回の経営混乱はクラブに多くの後遺症を残したが、「けがの功名」もある。一貫して減資の必要性を訴えてきた古賀社長を中心に、経営に求心力が出てきたことだ。新監督に決まった松本育夫氏は「人間そんなに能力の差はない。それなりのやり方をすれば選手はよみがえる」と、最下位からの反転攻勢を誓う。
 サガンにとって超えるべき課題はあまりに多いが、ヴァンフォーレの鷹野さんはこんな言葉を贈る。「自分たちはどん底まで落ちたとき、本当にチームが好きなのかどうかを考えさせられ、一体感を生んだ。ピンチのときこそチャンスです」
2003年12月29日 西日本新聞朝刊掲載
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 サポーターがクラブを運営することは無理なのでしょうか?
この疑問に答えるのは20年後にしましょう。日本にサッカー文化が根づき、サポーターの成熟がなされてからなら可能だと思うからです。



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